棚の隙間

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今月のおすすめ本 2020年11月号 『他者を感じる社会学 差別から考える』好井裕明著 ちくまプリマ―新書

 こんにちは。今年もあとわずかだと思うと、時の流れは早いなと感じるこの頃です。

 さて、今月のおすすめ本は好井裕明『他者を感じる社会学 差別から考える』です。

 タイトルから分かる通り、差別とはどんな行為なのか、差別にどういったものがあるのか書かれています。目次を見て購入したのですが、実際に読んでみて差別というのはどんなものかを丁寧に書いているなと思いました。ただ、この本は差別がどんなものかということもそうですが、その先にあるものを著者は訴えたかったのかなと思います。その中で、私がハッとした部分を引用したいと思います。ニュース番組で解放運動をすすめている被差別当事者と評論家の対談を見た時、評論家の言葉に著者は驚愕したそうです。要約すると、評論家が自分は今まで差別を受けたことも、したことのない普通の人間だ。そのうえで、質問したいと言ったそうです。著者は、自分が差別をしたことがないと断言したことに驚いたそうです。その理由を引用します。

(中略)自分の行為が差別的であるか否かについては、それを受けた人の「声」によってわかるのであって、行為者が自分で決めることができるようなものではないからです。P29

 

 この言葉にも十分そうだなと感じるのですが、著者が一番驚いたのは差別に関係ない人間が「普通」と言っていることに対して、驚いたそうです。著者はこの評論家の言葉にはある心理図式が働いているのではないかと語っています。以下、引用します。

差別を受ける人も差別をする人も「普通」ではない。彼らは「特別」であって、差別とは「特別」な人たちの中で起こる「特別」な出来事なのだ。その意味において差別は「普通ではない出来事」だ。他方で私も含めて多くの人々は「普通」の世界で生きている。「普通」である私は、差別とは基本的に関係がない。だからこそ、より客観的に、冷静に差別について考えられるし、「特別」を生きている当事者のあなたに、いろいろと問いかけられるのだ、と。

P30

 この言葉に、私も当てはまるのかもしれないと率直に思いました。私も、差別をする人を「普通」ではないと感じていました。私はそんなことをしないよとも。だから、著者の言葉にハッとさせられていました。差別は酷い、最低だと思っていても、実は関心を装った無関心で、距離を知らぬ間に開けていたのだと思いました。

 人とのつながり、差別とは何だろうと最近思います。私は、この本を読んで、とても時間がかかるのだと思いました。でも、もし各々が一人の人間であるという想像力をもって、誰かと接することができるならば、差別が見えなくて相手を傷つけてしまうこともなくなるのではないかなと思います。一人の人間に向き合う、私はとても怖いです。人種とか、何処で育ったから、どんな宗教を信仰しているとか、それを辞めて一人の人間として向き合うことができるのか分かりません。先入観とかで人を判断してしまうかもしれない。それをしてしまうかもしれない不安があります。ただ、もしその困難と向き合うことで息苦しい世界が変わるならば、私は向き合いたいと思いました。関心を装った無関心を私は少しづつ辞めていきたいとも思いました。

 長文失礼しました。また次月にお会いできたらと思います。

P.S.今まで引用をした際に、ページ数を書いていなかったことをお詫びします。次回から、引用した際はページ数を書くことにいたしますので、よろしければ本を読んだ際の参考にしてください。

 

12/29追記 読み直してみて、説明が足りず、私の考えが伝わらない感じがしたので修正しました。