棚の隙間

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今月のおすすめ本 2023.8月号 『ルポ リベラル嫌い』津阪直樹著 亜紀書房

 あらすじ

極右に惹かれる若者たち、移民を不安視する労働者たち、敵視される団塊世代、そして、高まるEUへの不信感・・・・。揺れる欧州の現場に取材し、不安の根源に迫る、渾身のルポタージュ。

 公式サイト

www.akishobo.com

 様々な立場から、リベラルに対して不信感を抱く人たちに迫っていた。人種差別や経済の停滞、極右団体が活動したり、台頭したりするのは欧州だけではなく、日本も同様ではないかと思う。それを考えて読むと、ここに書かれているのは遠い欧州の事ではなく、身近なことのように感じる。

 ただ、読んでいく内にこれは果たして「リベラル嫌い」の問題だけなのだろうかと感じる。私個人としての感想は、リベラルであることが問題なのではなく、様々な問題は新自由主義が問題なのではないかと思う。リベラルが新自由主義に蝕まれていて、リベラルが力を持って政治をすることが難しい社会になっているように思う。結果的に、リベラルの政党に票を入れても、何もしてくれないと感じ離れていく形になっているのかとこの本を読んで思った。

 この本には、移民の人が自分たちの仕事や文化を脅かすと思っている人が出てきて、その人は極右の団体に所属していることが書かれていた。その点でも、日本と似ている状況だと思う。自分たちよりも得をしていると考えている人が日本にも、存在しているように思う。ただ、私は移民の人が自分たちの文化を脅かすとか、仕事を奪うとは考えられないと思っている。むしろ、その問題提起自体が私は間違っていると思っている。考えるべきは、何故こんなにも貧しいのか、公共機関が乏しいのか。それは政府が公共機関や公的なことにお金を出さず、お金の循環が上手く出来ていないことに考えを巡らせるべきではないかと思う。文化を脅かす、仕事を奪っていると言って、それを救えるのは私たちの政党だけと煽ることをして、結果新自由主義的な市場にしている人間がいるのではないかと考えることを先にすべきだと思う。

 私を含めて、人間は複雑なことを考えるのは面倒だと感じるのかもしれない。簡単な対立構造にしたいと心のどこかで思っているのかもしれない。この問題の答えは出ないかもしれないし、問題自体が間違っているかもしれない世界で、考え続けながら生きなくてはいけないのだとこの本を読んで、改めて思った。