棚の隙間

自分の好きなものを綴っていきたいと思います。

今月のおすすめ本 9月号 「伝説にならないで ハロー言葉、あなたがひとりで打ち込んだ文字はわたしのたちの目に見えている」

 こんばんは。風が段々気持ちよくなり、秋の訪れを感じる時期ですね。さて、今月のおすすめ本はコチラ

 

 「伝説にならないで ハロー言葉、あなたがひとりで打ち込んだ文字はわたしのたちの目に見えている

 

 以下はサイトのURLです。

www.libro-koseisha.co.jp

 

 私がこの本を見つけたのは、本当に偶然でした。取り置きしてもらった本を取りに、本屋に足を運んだところ見つけたものです。立ち読みして、気が付いたらレジに向かっていました。

 読んだ感想として、まず挙げたいのは「イルミネーションとか、ネオンとかキラキラしたものに潜む淋しさ」かなと思います。本当に感覚的に表現してしまって申し訳ないのですが、作品を読んで感じました。私の周りとかはキラキラしていて賑やかとか、皆いるけどなんだか寂しいなって思う気持ちが何となく感じる時がある。でも、それは誰にも言えないし、ネットでこっそり言いたい。そんな感情を言葉にしたりしたら、こんな感じなんだろうなと思います。

 作者は当初詩を書くことは、怒りの感情をデコレーションして、怒りに見せないようにして投げつけることだったそうです。確かに、最初の方は生々しい言葉が並んでいるように思います。でも、一貫して感じたのは、「他者がいるということを思いださせてくれる」「一人一人の命のこと」そういった作者の思いみたいなものがどの詩にも感じることが出来ました。

 他者がいるということも、全く顔を知らなくて、ネットで自分が好きだなと思った本とかに共感してくれる。そういう、透明だけど存在が感じられる関係を言葉にしたら、きっとこういう言葉になるんだろうなと個人的には感じました。

 命についての詩とか、作品は沢山あると思います。むしろ、人間を描く以上、避けられないテーマだと思います。ただ、命は大切っていうけれど、正直その言葉が信用できない世の中になっているなとは感じます。殺伐とした世の中で、他人に構っていられない。それだけど、皆は命は大切だという。言い表すことが出来ない矛盾とか、通り過ぎていく他人の死に対して無関心だとか。そういう感情があるということ。きっと作者はそんなことを考えていなかったかもしれません。思ったまま書いたのかもしれませんが、個人的には私が日頃思っていることを代弁してくれたような気持ちになりました。あとがきも、前書きも、詩のようで読んでいてジーンとなりました。

 本の最後に、この本は一ページずつ切り離すことが出来て、切り離して持っていてもいいし、自分と似た人がいたら誰かにあげて、言葉が広がっていくようにと書かれていました。私もそれに倣って、気に入った作者の作品の一部を引用しておきます。一人でも、著者の言葉が届きますように。長々失礼しました、おやすみなさい。

 

(中略)

人が死ぬということは、

約束した日が来てもあの子がいなくて

そこにはわたししかいないということ

ある日 突然 ゼロになるということ

(中略)

命のことや心に関してのことは、ゆずってやったりしない

いきどおったら恥ずかしいとか 本音がかっこわるいとか 本気を笑うとか

そういうのはもういい

だれかの感情をへし折らせない わたしの意思はわたしが守る

(中略)

あなたの人生はわたしには作れない

わたしを生きる、わたしはわたしを生きる

 

そして、また、

さみしくなるなら、次の予定を作ろうね

死にたくなったら、次の予定を作ろうね

 

こうやって、次の予定を作り続けるから、

あなたには できたらどうしても 生きていてほしい

 

―放ちたい言葉があるから左手でぎゅっと握ってお守りにする

 

                  「この衝動はきみのもの」より