棚の隙間

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今月のおすすめ本 12月号 『韓国文学ショートショート01 夜よ、ひらけ』 チョン・ミギョン著 きむ ふな訳

 こんばんは、今日はおすすめ本を紹介していきたいと思います。今回、おすすめする本は

 チョン・ミギョン著 きむ ふな訳 『韓国文学ショートショート01 夜よ、ひらけ』です。正確に言えば、「きむ ふなセレクション 韓国文学ショートショート01 夜よ、ひらけ」です。その名の通り、きむ ふな氏が翻訳をされています。以下、出版社のサイトです。

 

www.cuon.jp

 

 私がこの本を読むことになったきっかけは、偶々書店で見つけたからです。元々、海外文学が好きで、読んでいたのですが韓国の文学は読んだことがありませんでした。この本に惹かれた理由は、韓国文学ということもありますが、韓国語でもこの本は読めるからです。内容は同じですが、韓国語と日本語の両方で読むことが出来ます。2-3年前から韓国ドラマがきっかけで、K-POPを聴くようになり、最近は特にK-POP界に興味があるので自然と意識が向いたのかもしれません。

 ショートショートだけあって、あとがきを入れて63ページです。最近、疲れが溜まって文字が頭に入らないという状態だったので、手に取りやすかったです。でも、読み始めると淡々と進んでいる物語の中に、沢山の感情が詰め込まれていて圧倒されてしまいました。

 登場人物は、主に三人で進んでいきます。僕、僕が憧れる天才のP、そして、Pの妻であるM。物語は、僕の視点で話が進んでいきます。僕は何でもできる天才のPの背中を追いかけながら、映画監督の道に進み、北欧に住むPとMに会いに行きます。そこで、Pはある研究に没頭していることを聞かされます。そして、MからPのある異変についても。

 淡々と進んでいく物語に、沢山の感情があります。叫びだったり、淋しさ、挫折、孤独、虚無、救済されたい気持ち。私は、読み終わった後に「Pの感情が分からないな」ということを感じました。僕と、Mの感情は伝わってくるのに、Pの感情が上手く読み取れませんでした。Mが作中、Pの異変について語るシーン、その理由を語るシーンがあるのですが、個人的にはどれも違うような気がします。彼が天才だったから分からないのではなくて、傷付いていても、孤独でも、うまく感情として吐き出せない人はいるし、誰しもがそういう場面に当たることがあると思います。もしかしたら、Pは何者でもなかったのかもしれないと思います。Pはそんな名前にできなかった感情かなと思いました。感情の集合体で、何者でもない。今思えば、そういう存在だったのかなと思います。本当に短い小説だったけれど、不思議な感覚を貰える本でした。

 長々ごめんなさい、韓国文学が少しでも広まりますように。