棚の隙間

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今月のおすすめ本 4月号 『設計者』キム・オンス著 オ・スンヨン訳

 こんばんは、感染症の流行で暗い気持ちになってしまい、中々本に集中できないです。さて、今月のおすすめ本はコチラになります。URLも載せておきます。

 『設計者』キム・オンス著 オ・スンヨン訳

 

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 この本は新しい韓国の文学シリーズから刊行されている本です。殺し屋の主人公レセンが暗殺の計画を立てている人物=設計者が誰なのかを考えることから、すべてが始まります。

 物語が進んでいく中で、主人公のレセンが序盤と比べて人間らしくなっていくのが印象的でした。序盤、レセンは感情もなく、淡々と人を殺めていきます。ですが、後半から同僚のために涙を流したり、自分が誰かから忘れられる夢を見て落ち込んだり、涙を流したりしています。どうして彼が人間らしくなったのか、私はよくわかりませんでした。物語で重要な役割を担う少女が出てくるのですが、その少女を守りたかったのか、それとも同僚を奪ったことが許せなかったのか。それはレセンしか分からないし、レセンも分からないかもしれません。でも、私個人の意見として、確信はないですが、もしかしたら彼は「自分の人生を生きよう」と考えたのかもしれません。今まで、いつか自分もこの世から誰にも知られることなく消されてしまう、そういった虚無感がずっとあって、でも、少女に出会って自分の人生を生きようと決めたのかもしれません。

 あらすじに矛盾を孕むことでしか生きられないと書かれていましたが、確かにこの本に出てくる登場人物は皆、矛盾を孕んだ人ばかりのような気がします。自分の人生を生きたい、でも生きられない。この世界から抜け出せない。それは、レセンのような世界に生きる人々だけはなくて、私達もそうかなと思います。自分の人生を生きるのは、しんどいことだと思います。だから、私はレセンに惹かれたのかもしれません。嫌な過去も、間違えてしまったことも、全部背負って生きていくのは、自分の人生に責任を持つことだと思います。レセンはそれをやり遂げようと思ったのかなと思いました。血なまぐさいシーンも多くありますが、レセンが感じるささやかな日常や感情も印象的でした。500ページを超える大長編ですが、あっという間に読み終えてしまいました。またどこかのタイミングで読めたらいいなと感じます。

 

 今日はこの辺で失礼します、長々と失礼しました。